『りはめより100倍恐ろしい』

歯の治療薬が喉にしみます。
苦いし気持ちわるくて、オエッてなって軽く鬱です。


そんな鬱から気をそらすために読んだダ・ヴィンチ(雑誌)で面白そうな新刊を見つけた。立ち読んでみる。普段ならパラ見で飽きるところ、どういうわけか引きずり込まれて立ったまま30分経過。しかもレジに近い棚だ。腰も痛いし、さすがに社会の目も気になってきたので、ついに買ってしまった。
ハードカバーは発売日を前から把握しているものでない限り、安易に買わないと決めていた。しかしそんな掟を軽く破らせるぐらいの魔力・・・というか魔性がこの本にはあったのだろうということだ。
紹介する。



りはめより100倍恐ろしい

りはめより100倍恐ろしい


<いじりはいじめより100倍恐ろしい>
描かれているのは「男子高校生のシビアな泥沼覇権争い」である。

いっき読みできちゃったのは、文章のトーンが軽いからだけじゃない。
実際に私が、これに近い光景を幾度も目にしているから。生生しくて、ゾクゾクする。
いや、最低限の感受性を持っている者ならば、だれでも体験しているはずのことだ。 あの気持ち悪いドロドロな感じ。


そりゃあ中学高校時代に「人間関係で悩む」ことは誰でもあるだろう。発達段階的には当たり前だ。
でもそういう言い方ってアバウトすぎるし、逃げてないか、美化しすぎじゃないかって思う。当事者としては。

「悩み」なんていうよりも、それはもっともっともっと生臭くて切羽詰ったもの。生きるか死ぬかをかけた戦略、謀略である。フルに頭を使う、フットワークも軽くなければならないから体力も使う。生徒たちのグリコゲンのその大半は、勉強でも趣味でもない。クラス、または部活のなかでの覇権争い(身のふりかた)で消費される。
社会のなかで普通に生きたいだけなのに。そのささやかな目的のためには、どんなに純粋で優しかった子も悪魔にならざるおえない。
私にも、忘れてしまいたい汚らわしい記憶の数々がある。


しかし、良くも悪くもヴィヴィットであったことには変わりない。それに、策略と罠に満ちた世界でのサバイバル・・・・・・これは小説にしてつまらないわけがないじゃないか!!

この小説の作者は現役で高校生。
すごい、渦中に身をおきながらそれをパロディ化できる視点。

スピード感あふれる文体だから、私もなんだかノリで自己嫌悪と対峙してしまったみたいだ。暗くはない。けれど、展開に戦慄が走る。腸が蝕まれるような、おぞましさを感じながら、それでも続きを読まずにはいられない。

それにしてもみんな、一度は憧れるよね。 下 剋 上。 

ふふふ。
中高時代、腹に一物ある者は読むといいと思う。
で、たっぷり自己嫌悪を催すのだ。ほら追体験は癒しになるんだって、心理学でも言われてますし。