呼吸するバンドネオン

空前の、タンゴブームが到来。
しばらく前から燻ってた火が、ここへ来て勢いを増してきた。


今日は、小松亮太というバンドネオン奏者のCDを買いました。
小松さん自身、超カコイイ曲をいくつもつくっているのだけど、今回は、ピアソラというおっちゃん(本当はタンゴの神)の曲を彼が演奏したものです。


ピアソラの曲は、探偵もののバックに使われそうなイメージといえばわかりやすいのかもしれないけれど、
スリリングでキレのある、かつノスタルジックでスタイリッシュな…
ああもう、どういう形容詞をあげて表現したらいいのかわからないほど。
とにかく私はそのメロディラインから、音から、雰囲気から全てにメロメロなのです。
ピアソラ自身はバンドネオンの神ですが、彼の曲はバイオリンやピアノ、サックスからギターまで、いろんな楽器で演奏されます。どんな楽器で演奏しても、それぞれにカッコイイ曲になるから凄い。楽器を選ばない作曲家ですね。
とはいえ、やっぱりバンドネオンの独特の雰囲気が曲の妖しさを一番よく演出してくれる。


バンドネオンとは、アコーディオンみたいな原理で、つまり蛇腹を使って空気を送り込んで音を鳴らす仕組になっているのですが、
何が魅力って、それは、CDごしにも「呼吸の音」が聞こえるところです。
歌い手のブレスのタイミングで、バンドネオンが息を吸い込む「スーッ」という音が聞こえ、それが曲のライブ感を引き立てる。特に、ゆったりした、ノスタルジックな曲ではそれが際立つ。
初めて聴いた時は、演奏している人が深呼吸してるんだなって、本気で信じていました。そのくらい。
本当に、生々しい呼吸の音。
このブレスが聞こえると、次はどんな展開がくるのか、思わず耳を済ましてしまう。引き込まれてしまう。

そんな妖しい魅力たっぷりのバンドネオンで、すこし大袈裟なほど緩急のハッキリしたメロディが奏でられると、
目の前の光景が全てドラマティックに見えてきて、何か事件がおこるんじゃないかって、ワクワクさせてくれるのです。